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「補償」から「予防・リカバリー」へ──三井住友海上が挑む、損保の枠を超えた健康寿命延伸へのアプローチ

12 時間前
読了時間: 8分

三井住友海上火災保険株式会社 地域マーケット部 政策プロジェクト共創グループ長 山巻大輔様

三井住友海上火災保険株式会社 地域マーケット部 政策プロジェクト共創グループ 松岡伸輔様

三井住友海上火災保険株式会社 地域マーケット部 政策プロジェクト共創グループ 川崎晃佑様

慶應義塾大学医学部 医科学研究連携推進センター 特任助教 松長卓志

慶應義塾大学医学部 4年 藤井大輔

インタビュー日:2026年6月18日


「保険・金融サービス事業を通じて、安全と安心を提供する」。このミッションを掲げ、社会インフラを支える三井住友海上火災保険株式会社。同社は現在、「万が一の補償」という従来の枠組みを超え、未然に防ぐ「予防」から、起きてしまった後の「リカバリー」まで、人々の健康寿命を延ばすヘルスケア領域へのアプローチを急速に強化しています。

なぜ損害保険会社が医療・ヘルスケアの未来へ投資し、スタートアップとの共創を目指すのか。そこには、「課題起点」で未来を変えようとする挑戦者への深い共感と、自社の全国規模のネットワークを解放して社会課題を共に解決したいという、同社の強い意志がありました。



企業・事業紹介


──まずは、御社の事業概要と大切にされているミッションについて教えてください。


当社は損害保険を中心に、グループ全体で生命保険やリスクソリューション全般を総合的に展開しています。すべての活動の指針となるミッションは、「保険・金融サービス事業を通じて、安全と安心を提供する」ことです。


私たちが提供する保険には、物理的な「形がない」という大きな特徴があります。形がないからこそ、時代とともに変化する複雑な社会課題や地域課題に対して、既存の枠にとらわれない柔軟なソリューションを提供できます。例えば、少子高齢化が急速に進む現在の日本において、社会の形が変われば求められる安心の形も当然変わっていきます。事業を通じて多様な課題を解決し、人々の安全な生活を守っていくことこそが、社会における私たちの最大の存在意義であると自負しております。



医療・ヘルスケアへの取り組み


──重点領域の一つとして「ヘルスケア」を掲げていらっしゃいます。具体的な取り組みや注力する背景をお聞かせください。


現在、日本では健康問題や少子化対策が喫緊の社会課題です。当社としても、形のないサービスを提供する強みを活かし、この領域の課題解決に貢献したいという思いから、全社的にヘルスケアへの取り組みを強化しています。


特徴的なのは、三井住友海上単体ではなく、グループ内の生命保険会社などと連携し、総合力で社会課題を捉えようとしている点です。特に注力しているのが「保険の前後」のソリューションです。事後の「補償」だけでなく、未然に防ぐ「予防」や、起きてしまった後の「リカバリー」をサポートするサービスへと提供価値を広げています。

(参考:三井住友海上:補償前後のソリューション)


──「予防」や「リカバリー」に関して、具体的にはどのようなプロジェクトが進行しているのでしょうか。


例えば、最新デバイスを活用した法人向けサービス健康起因自動車事故防止ソリューション~Nobi for Driver~(ノビ フォー ドライバー)があります。スマートウォッチでドライバーの健康状態を日常的に見守り、健康起因による事故を未然に防ぐものです。当社は、株式会社enstemの同サービスを全国のお客さまにご紹介することで、お客さまの事故防止取り組みを支援しています。


また、治療の選択肢を広げるための保険開発にもグループ全体で注力しています。三井住友海上あいおい生命保険(MSA生命)では、西原 広史教授(慶應義塾大学医学部がんゲノム医療センター )のご協力のもと、がんの「遺伝子パネル検査」について自由診療と保険診療の両方をカバーする「ガン遺伝子パネル検査の保障する特約」を業界初で開発しました。あらゆる標準治療を尽くす前にパネル検査を行い、最適な治療にいち早くアクセスして早期介入に繋げることを目的としています。 


私たちがこうした仕組みづくりにこだわるのには理由があります。例えば、先端医療などの領域において、公的保険でカバーされない自己負担部分を私たち民間保険が支えるような仕組みができれば、最先端の治療をより多くの方に届けることができるのではないかと考えています。




健康医療ベンチャー大賞への想い


──貴社には、健康医療ベンチャー大賞の立ち上げ初期から長きにわたりご協賛いただき、誠にありがとうございます。改めて、支援を始められた当初のきっかけや経緯について教えていただけますでしょうか。


当初、私たちは社内でヘルスケア領域における社会課題の解決を模索しており、「再生医療の普及」に着目していました。当時、再生医療はまさにこれから社会に羽ばたこうとする未踏の領域でした。そうした新しい医療技術が世の中に定着するためには、何より従事者の方々がリスクを恐れずに目の前の研究や治療に没頭できる「安全と安心の環境(セーフティネット)」が不可欠だと考えたのです。


そこで、日本再生医療学会様と連携し、業界初となる「再生医療の従事者をサポートする保険」を開発しました。その制度設計の過程で、慶應義塾大学の中村雅也先生(慶應義塾大学整形外科学教室教授教室主任/診療科部長/研究主任)をはじめ、数多くの先生方と深く議論させていただく貴重な機会を得ました。最先端の医療を普及させる上で「安全と安心」がいかに重要かという点で強い共感が生まれ、そこから慶應義塾大学の皆様との関係が深まっていったのです。そうしたご縁が重なり、健康医療ベンチャー大賞にも立ち上げの初期段階から関わらせていただくようになりました。



健康医療ベンチャー大賞に参加して感じたこと


──長年サポートされる中で、運営陣や参加する学生・起業家に対してどのような印象を持たれていますか?


まず、先生方をはじめとする運営側の方々の「熱量」が圧倒的に高く、支援への意欲が極めて強いことに毎回驚かされます。学生の成長や育成、そこから繋がる医学の発展を本当に「ピュア」に追求されており、常に前向きで素晴らしいカルチャーが根付いていると実感しています。


また、参加されるチームのアプローチも非常に魅力的です。事業評価の際はベンチャーキャピタルなどの視点からどうしても市場性や「事業として儲かるか」といった経済的視点が先行しがちですが、この大会の参加者は「医学の力を使って、目の前の課題をどう解決するか」という確固たる「課題起点」の姿勢を持っています。たとえ当事者しか知り得ないようなニッチな領域であっても、自分たちの技術で何とかしたいと果敢にチャレンジしていく姿勢は、この大会ならではの素晴らしい特徴です。だからこそ、民間企業の立場から、困難を乗り越えて世の中に出ようとする彼らを真にサポートしたいと強く願っています。




挑戦者へのメッセージ


──事業化や社会実装には高い壁があると思います。御社としてどのようなサポートが可能だとお考えですか?


ヘルスケア領域のスタートアップにとって、初期段階でのPOC(概念実証)や社会実装の場を見つけることは非常に困難な壁です。その点で、損害保険会社である私たちの強みが大いに活かせると確信しています。


私たちには、多様な産業の企業様や、全国の自治体様と張り巡らされた幅広いネットワークがあります。地域が抱える特有の課題と、皆さんの革新的なソリューションをマッチングさせ、実証の場の提供に貢献すること、パートナーシップを構築することが可能です。単なる資金提供にとどまらず、私たちが持つビジネス基盤を活用していただくことで、社会実装へのスピードを高められると考えています。多様なビジネス基盤を持っていることは私たちが唯一誇れる強みの一つであり、事業化の壁を共に乗り越えていきたいと考えています。


これからの保険は「事故があったときの補償」だけでなく、「事故の発生確率を減らす(未病・予防)」ことへと価値を広げていきます。そしてもう一つ重要なのが、「起きてしまった後のリカバリーや重症化を防ぐ」領域です。万が一病気になってしまった後でも、進行を遅らせたり再発を防止したりして、良い状態を長く保ち、幸せに生きていくためのリカバリー支援です。誰もが直面しうる認知症の領域なども含め、あらゆる領域で健康寿命を長く保つラインナップを広げていく上で、スタートアップの皆さんの斬新なアイデアは不可欠です。


──最後に、これから医療・ヘルスケア領域で起業や社会実装を目指す挑戦者たちへ、メッセージをお願いします。


当社のグループタグラインに「挑戦を投資する」という言葉があります。見えないリスクに対して挑戦する人がいなければ、社会の壁は決して超えられません。新しいことに果敢にチャレンジする皆さんの精神は、まさに当社の根底にある価値観と深く共鳴しています。何もしなければ何も起こりませんから、まずは挑戦することが何より大切です。


ヘルスケアや医学の領域は、結果が出るまでに非常に長い時間がかかります。だからこそ、すぐに成果が出ないこと自体も楽しみながら、失敗を恐れずにチャレンジし続けてほしいと思います。私たち協賛企業が、皆さんが健全に、安心して挑戦できる環境を提供します。大いに失敗し、その中からたった一つの「勝ち筋」を見つける覚悟を持って挑んでいただければ、必ず良い結果に繋がると信じています。


共に課題解決の領域を広げ、医療とヘルスケアのより良い未来を創っていきましょう。皆様の熱い挑戦を、心からお待ちしています。







 
 
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