「健康寿命」という言葉が不要な社会を目指して──湧永製薬が10年間、健康医療ベンチャー大賞を支え続ける理由

湧永製薬株式会社 代表取締役社長 湧永 寛仁 様
実行委員:藤井(慶應義塾大学医学部4年)・藤村(慶應義塾大学医学部5年)・中野(慶應義塾大学医学部4年)
インタビュー日:2026年5月26日
1955年の創業以来、「国民の健康に奉仕する」という理念を掲げ、予防医学の観点から人々の健康づくりに貢献し続けてきた湧永製薬株式会社。「予防」「品質」「カウンセリング」を基本方針とし、主力ブランドである「レオピン(海外名:Kyolic)」シリーズを展開し、現在までに世界60か国以上で販売実績があります。 同社は、慶應義塾大学で開催されている「健康医療ベンチャー大賞」に対し、第1回から現在に至るまで10年間にわたり協賛を続けています。歴史ある製薬企業が、なぜ若き起業家や研究者たちの挑戦を長期にわたって支援し続けるのか。そこには、創業当初から受け継がれる「未来の医療への切実な想い」と、新たな価値を共創しようとする「オープンイノベーションへの期待」がありました。本記事では、湧永製薬の事業にかける想いから、挑戦者たちへのメッセージまでを深く掘り下げます。
企業・事業紹介
──本日はよろしくお願いいたします。健康医療ベンチャー大賞には第1回から継続してご協賛いただいておりますが、まずは貴社の事業内容と、その成り立ちについて教えていただけますでしょうか。
はい、よろしくお願いいたします。弊社は1955年に大阪で創業した製薬会社です。創業当初から一貫して「国民の健康に奉仕することを創業の精神とし、自主技術の開発による優れた製品を通じ、広く社会に貢献する」という企業理念を掲げ、事業を展開してまいりました。
一般的に「健康に奉仕する」といっても、医療のアプローチには大きく分けて二つの方向性があると考えています。一つは、病気になってしまった方を治す「治療的アプローチ」。そしてもう一つが、そもそも病気にならないようにする「予防的アプローチ」です。もちろん弊社でも治療や診断に関わる事業を展開しておりますが、私たちが特に強みとし、創業時から最も重視してきたのが「病気になりにくい体づくり」をサポートする予防的アプローチです。
この理念のもと、私たちは「予防」「品質」「カウンセリング」を基本方針に据え、専門家のカウンセリングを通じて製品をお届けすることで、皆様の健康づくりをサポートし続けています。まだ病気を治すことが最優先されていた時代から、いかにして病気を未然に防ぎ、日々の元気を支えるかというテーマに向き合い続けてきたのが弊社の根幹にある考え方です。
医療・ヘルスケアへの取り組み
──「病気になりにくい体づくり」というアプローチは、現在の人々の生活や社会課題の解決にどのように繋がっているとお考えですか。
現在、日本が直面している最も大きな社会課題の一つが「平均寿命と健康寿命のギャップ」です。日本は世界各国より速いペースで少子高齢化が進み、人口減少に転じています。「平均寿命」が年々伸びて82歳前後となっている一方で、自立して健康に生活できる「健康寿命」は72歳前後にとどまり、この乖離に伴う社会保障費の増加が強く懸念されています。人生の終盤の約10年間は、何らかの介護や支援が必要な状態になってしまうという現実があるのです。
私たちが目指しているのは、まさにこのギャップを埋めることです。この目標に向けて、弊社は創業から5年後の1960年に「熟成ニンニク抽出液™」という独自の素材を開発しました。以降、長年にわたり研究を重ねてきましたが、近年この素材の中に「S1PC®」という抗老化作用を持つ成分が含まれていることを見出しました。 現在、慶應義塾大学医学部出身で抗老化研究の第一人者である一般社団法人プロダクティブ・エイジング研究機構の今井眞一郎代表理事とも共同研究を進めており、最先端のサイエンスを用いたアプローチで、S1PCの作用機序の解明など健康への貢献をさらに確かなものにしようとしています。
──御社が医療やヘルスケアを通じて社会に届けたい価値とは何でしょうか。
人間が本来持っている「自然治癒力」を高めることです。若い頃は風邪を引いても自然に治っていたものが、加齢とともに臓器の機能が低下し、治りにくくなっていく。この人間本来の治る力、自然治癒力をいかに高い状態に保つかということが非常に重要なテーマです。最終的な目標は、「平均寿命と健康寿命を一致させること」です。もっと言えば、「健康寿命」という言葉自体が世の中から不要になる社会を創りたいと考えています。
また、私たちは「医薬品に国境はない」という考えを大切にしています。この思いから海外展開を積極的に行い、1972年には米国にワクナガ・オブ・アメリカを、2017年にはヨーロッパ事業拡大のためドイツにワクナガ・オブ・ヨーロッパを設立いたしました。私たちの主力ブランドである「レオピン」シリーズは、海外では「Kyolic(キョーリック)」ブランドとして世界60か国以上で販売実績があります。2022年にはドイツにおいて熟成ニンニク抽出液が「動脈硬化予防」を効能とし医薬品承認を取得いたしました。世界中の人びとの健康と幸福に大きく貢献することこそが至上の命題であり、これからも世界中の優秀な研究者たちと手を組みながら歩み続けていきます。

健康医療ベンチャー大賞への想い
──そうした壮大なビジョンをお持ちの中で、健康医療ベンチャー大賞にご協賛いただいたきっかけは何だったのでしょうか。
一番初めのきっかけは、薬学生の連盟のような団体からお声がけをいただいたことでした。当時は、薬学部の学生に対して「薬剤師の役割は調剤薬局や病院だけではなく、社会においてもっと多様な活躍の場がある」ということを伝えるための協賛からスタートしました。 その後、当時まだ学生だった田澤先生らが中心となってこのベンチャー大賞を立ち上げる際にもお声がけをいただき、「ぜひ応援させてほしい」ということで協賛することになり、現在に至っています。
──第1回から今回の第10回まで、長きにわたって継続的に支援してくださっている理由は何でしょうか。
根底にあるのは「純粋に新しいことに挑戦するベンチャーを応援したい」という強い思いで
す。 加えて、私たち企業側にとっても非常に大きな学びの場になっているからです。医療やヘルスケア領域の最先端のアイデアや技術、情報に直接触れることができるのは、本当に勉強になります。そこで得た知見が、将来的に自社のビジネスや新たな協業に繋がる可能性もあります。そうした期待も込めて、慶應義塾大学から生まれるイノベーションを応援し続けています。
健康医療ベンチャー大賞に参加して感じたこと
──回を重ねる中で、参加チームやビジネスプランに対する印象に変化はありましたか?
第1回の頃からレベルは非常に高かったですが、回を追うごとにさらに進化していると感じます。特に素晴らしいのは、医療関係者や医学部の学生が関わっていることもあり、最初からしっかりと「エビデンス(科学的根拠)」に基づいたアプローチがなされている点です。医学的根拠をベースに事業を組み立てる姿勢は本当に勉強になります。
また、最近の顕著な変化として、「単なるアイデアベースの発表」から、「すでにビジネスとして販売や実装を始めており、その中で改良を重ねているフェーズの発表」が増えてきた印象があります。入り口のアイデアだけでなく、実際に社会に実装し、現場のフィードバックを得ながら前に進めている。そうした実践的なチームが増えてきたことは、大変素晴らしいことだと感じています。
──長く支援してくださっているからこそ感じる、このベンチャー大賞ならではの価値とは何でしょうか。
最も大きな価値は「ネットワーク(人との出会い)」です。これに尽きると思います。 健康や医療という同じ志を持つ優秀な方々と知り合い、直接ディスカッションできることは、企業にとって何にも代えがたい財産です。
また、組織のトップとして、ゼロから事業を立ち上げる参加者の皆様からは個人的にも強い刺激を受けています。私は社長としては4代目であり、すでに確立された基盤の中で事業を引き継ぎました。しかし起業家の方々は、ゼロ、あるいはマイナスの状態から事業を立ち上げ、形にしていきます。その圧倒的なバイタリティには心から尊敬の念を抱きますし、「自分ももっと頑張らなければ」と奮い立たされます。
他の協賛企業様にとっても、ベンチャー大賞の場は、自社だけでは限界がある中で「自社の強みとベンチャーのアイデアをマッチングさせる場」として非常に価値があるはずです。だからこそ、今後は参加企業や出場者との「交流の機会」がさらに充実していくことを期待しています。イベント当日に名刺交換ができなかった場合でも、事務局が後日面談などをセッティングしてくれる仕組みがあれば、企業とベンチャーの協業はより一層加速するのではないでしょうか。
挑戦者へのメッセージ
──最後に、これから健康医療ベンチャー大賞に挑戦しようと思っている方々へメッセージをお願いします。
皆様の根底にあるのは「患者様やお客様の命、そして健康に貢献したい」という思いだと思います。世の中にはまだまだ解決すべき課題がたくさんあります。だからこそ、皆さんが持っている健康に関係する新しいアプローチを、この舞台でどんどん社会に向けてPRしていただきたいです。
健康医療ベンチャー大賞は、単なるビジネスコンテストではなく、大企業や投資家など、社会実装に必要なリソースを持った人々との「マッチングの場」でもあります。ベンチャー企業の皆様は素晴らしいアイデアを持っていますが、事業をスケールさせるための資金や施設が不足していることが多いはずです。一方で私たちのような企業は、そうしたインフラは持っていますが、既存の枠にとらわれない新しいアイデアを常に求めています。
だからこそ、我々とコラボレーションできる部分があれば、ぜひ一緒に取り組みたいと強く思っています。企業の資金や施設と、皆様のアイデアが結びつき、お互いが「Win-Win」になれる関係性へと発展していくことを期待しています。
私たち湧永製薬はこれからも、皆様のような情熱ある挑戦者たちとのネットワークを大切に
し、対話を重ねていきたいと考えています。「健康寿命という言葉が不要になる社会」を創るためには、一社の力だけでは到底足りません。ぜひ、皆様の若い力と柔軟な発想で、私たちと一緒に世界の医療とヘルスケアの未来を切り拓いていきましょう。皆様の果敢な挑戦を心待ちにしています。
湧永製薬株式会社は、1955年の創業以来、「予防」「品質」「カウンセリング」を基本方針に、専門家のカウンセリングのもと製品をお届けすることで皆様の健康づくりをサポートし続けております。滋養強壮剤「レオピン」シリーズを主力に、海外でも「Kyolic(キョーリック)」ブランドとして世界60か国以上での販売実績があります。
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