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東日本大震災の危機から生まれた、世界でも類を見ない医薬品流通共同事業 ーエンサイスが、最先端テクノロジーと「恩返し」の精神で挑むインフラの構築支援

15 時間前
読了時間: 8分

エンサイス株式会社 代表取締役社長 木村 仁様

実行委員:藤井(慶應義塾大学医学部4年)・田口(慶應義塾大学医学部5年)

インタビュー日:2026年7月31日


エンサイス株式会社は、日本の医療用医薬品流通のほぼすべてをカバーする世界でも類を見ない共同事業体です。2011年の東日本大震災の混乱を機に、「日本に必要だ」と確信した木村 仁氏が立ち上げた同社。医薬品流通データの安全な一元管理と、社会への「恩返し」を存在意義とする稀有なビジネスモデルを確立しています。今回は、代表取締役社長を務める木村 仁氏に、ドラマチックな創業ストーリー、最先端AIがもたらすテクノロジーの革新、そして健康医療ベンチャー大賞の挑戦者に贈る極めて実践的なアドバイスを詳しく伺いました。


企業・事業紹介


──貴社の創業の経緯について教えてください。


当社の設立は、2011年3月11日の東日本大震災が直接のきっかけです。当時、被災地では多くの患者さんや医療機関が必要な薬を求めていましたが、医薬品卸さんが、地域や医療機関の被災状況、そして、どこに、何の薬が、どれだけ必要かの情報を集め、実際に命をかけて届けるという昼夜を通した尽力が続きました。


日本の医療用医薬品は、そのほとんどが全国の医薬品卸を通じて医療機関へ届けられています。しかし、各医薬品卸が持つ流通データはバラバラであり、災害時にそれらを一元的に集計する仕組みがありませんでした。医薬品卸さんの想像を超える使命感を目の当たりにし、「日本の医療と患者さんの命を守るためには、医薬品流通データを一元管理する共同プラットフォームが必要だ」と確信したのです。


震災の当日、私はこのデータインフラの構築を決意し、ビジネスプランを自ら執筆しました。全国の医薬品卸さんを一社ずつ、1年半かけて訪問し、多くの関係諸機関との交渉を重ね、2012年11月に設立へと至りました。全国の医薬品卸が共同出資するこの仕組みは、世界に類を見ないモデルです。


──上場や利益の最大化を目的としない、独自の存在意義についてお聞かせください。


私たちは、通常の民間企業と違い、日本の社会インフラである医薬品流通データをお預かりしている企業です。


当社の役割は、この極めてデリケートなデータを安全に一元管理・分析し、製薬企業や医療機関、そして学術研究のためにご提供することです。それによって、適切な生産計画や効率的な流通が実現し、ひいてはそれが社会全体の安定に直結します。


私たちは、少数精鋭の組織として株主の皆様のもとで運営されており、「データを守り、分析によって社会へ還元する」ことを目的に存在しています。この公共性とインフラとしての信頼性が、当社の最大の誇りです。



医療・ヘルスケアへの取り組み


──貴社がお預かりしている貴重な医薬品流通データは、具体的にどのように活用されているのでしょうか。


通常時においては、製薬企業が自社の製品がいつ、どこで、どれだけ必要とされているかを予測するためのデータとして活用されています。また、特定の地域における疾患の傾向分析や、日本全体の学術・臨床研究など、極めて公共性の高いデータインフラとしてもお使いいただいています。


ただし、個々のデータは厳密に保護される必要があります。各種ルールを徹底して遵守し、極めてセキュアな環境を維持しつつ、日本の医療に有益なインサイトを提供することに全力を注いでいます。


──近年、AIをはじめとするテクノロジーの進化をどのように事業に取り入れられていますか。


この1年における「AIエージェント」の進化は、少人数で最大の社会価値をお返しすることを目指す当社にとって、計り知れないイノベーションをもたらしています。


クライアントからの複雑なデータ分析のご依頼に対し、従来に比べ、大変短期間でよりクリエイティブなインサイトを伴って完了できるようになりました。AI活用におけるセキュリティルールと厳格な運用を基本に、スピード感と付加価値を社会にご提供できるようになっています。日々できることが広がっており、当社の深い知見を有する多様な人材と技術の進歩の組み合わせがもたらす明日を楽しみに尽力しています。




健康医療ベンチャー大賞への想い


──「健康医療ベンチャー大賞」に協賛されたきっかけと、その理念に共感された理由は何ですか。


私自身、アントレプレナーシップに強い情熱があり、自らも数年おきに起業してきました。アメリカの大学院で学び、現地のピッチイベントに関わってきた背景から、若い世代の挑戦を応援したい気持ちが強くありました。


そんな中でお話を伺った健康医療ベンチャー大賞は、単なる利益追求ではなく、根本に「いかにして社会課題を解決するか」という強い社会的思想を持っていました。この姿勢は、「社会にとって良いことを追求する」という当社の経営文化と驚くほど深く共鳴するものでした。これが協賛を決定した最大の動機です。


バイオや医療の領域で真摯に取り組んでいるベンチャーの技術は、絶対に世の中に出て社会実装されるべきです。私たちのビジネスもこうした多くのアントレプレナーたちの存在と深く結びついており、彼らが想いを具現化できるよう、心から応援したいと感じています。



健康医療ベンチャー大賞に参加して感じたこと


──実際に大会に参加され、発表をご覧になってどのような印象をお持ちになりましたか。


協賛を始めて数年が経ちますが、大会のレベルは年々劇的に向上していると実感しています。プランの質や技術水準がどんどん高くなり、どの発表を聞いても知的好奇心を強烈に刺激されます。


普段、私たちはグローバル展開の支援なども行っているため、つい「この技術はグローバルで通用するか」「どのようなプロセスで市場に展開させていくべきか」という厳しいビジネスの目線でプランを見てしまう部分があります。しかし、そうした厳密な視点を考慮してもなお、素晴らしい結晶のような熱意と社会実装に向けた着実な計画を持ったチームが多数輩出されています。聴講する時間は本当に楽しく、経営者としても多くの気づきをいただいています。


──慶應義塾大学主催ならではの良さは、どのような点にあると感じられますか。


改めて「慶應義塾」というコミュニティの底力をリマインドされています。


医学部や理工学部といった学部の枠組みを簡単に超え、在学生、卒業生、教員、および協賛企業が、塾に対する強い愛着と誇りを共有して一つに集まる。この学際的で有機的な結束力は、他のビジネスコンテストにはない独自の強力な特徴です。主催の先生方との交流も含め、この場から未来の変革者が生まれるのだという感覚が得られます。


また、大会が終わった後のフォローアップとして、出場者同士やOBOGが繋がれる「アルムナイ(OBOG会)」の活動をさらに強化していくことが、若き挑戦者たちの継続的な支えになると考えています。現実の壁にぶつかったときに励まし合える仲間やメンターと出会える仕組みを、協賛企業としても共に育てていきたいです。



挑戦者へのメッセージ


──ヘルスケア・医療の分野で起業や事業創造に挑戦しようとしている学生、研究者、起業家の方々へ、メッセージをお願いいたします。


これから挑戦される皆さんに、私が経営、そして自らの起業経験から培った3つの本質的なアドバイスを贈ります。


第1に、「本当に人生をかけて解決したい社会課題か」、そして「世に出そうとする自らの技術やビジネスモデルに、心から惚れ込んでいるか」を自分自身に問いかけ続けてください。ヘルスケア分野の起業は、法規制、資金調達、臨床試験など、多くの巨大な壁が立ちはだかります。どんなに優秀な人でも、壁にぶつかったときに立ち上がるための「熱狂」と「惚れ込み」がなければ、走り続けることはできません。


第2に、「最初からグローバルに展開することを前提に、逆算して事業を設計すること」です。国内市場だけを見ることはもったいないことです。最初から「世界中でどうビジネスを展開していくか」を描き、バックキャストして研究開発や資金調達の計画を刻む視座を持ってください。私もその最中にいます。


第3に、ビジネスを具現化する「エンジニアリング・オペレーション(製造やプロセス)」と、世界と戦うための「特許(知財・IP)の抑え方」にも重きを置いてください。コンセプトや技術がどんなに優れていても、それを安定的に提供するプロセスが弱ければグローバルな競争には勝てません。また、海外のベンチャーは周辺特許も含めて非常に綿密に知財を抑えてきます。専門家を巻き込んで、周辺特許も含め戦略的に知財を抑えることを初期から考えてください。


エンサイスも、常に皆さんと同じように、あるべき未来と現実のギャップに悩み、マイルストーンを刻みながら未来へ向かう挑戦者の一員です。私たちは皆さんの素晴らしい技術や想いを社会へ送り出すための、信頼できる「共創パートナー」でありたいと願っています。ぜひ、この難しくも社会的意義の高いヘルスケアの領域で、共に歴史を創り、世界を驚かせましょう。







日本の医療用医薬品流通のほぼすべてをカバーする世界でも類を見ない共同事業体として、「情報を通じた持続可能な医療社会への貢献」を理念とする企業です。精緻な医薬品流通データや処方箋フロー情報を基に、市場動向など様々なリサーチレポートも発信。AI等を活用したコンサルティングも提供し、確かな情報と高度な分析力で医療社会を支えております。


エンサイス株式会社

https://www.encise.co.jp/



 
 
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